家に対する思い
家を人に例えたらどんな性格の家に住みたいですか?
- 威風堂々とした家?
- おとなしく控えめな家?
- なんでも気が付く世話好きな家?
- どんな人とも柔軟に付き合える家?
いろんな家を訪ねると、家にも性格があるように感じます。 たぶん、家主の性格に似るんじゃないかと思います。
家を設計していくという行為は、まだ形にならない建て主の思いを汲み取り、具体的に形にしていく行為です。言葉にできない、絵では表現できない思い、微妙なニュアンス。そういったものをすくい上げ、こちらの建築的な知識と混ぜあわせて、たまに寝かせて、カタチ作っていきます。
設計には、法律や予算、構造など様々な制約が関わってきます。そういった多種多様な要素をうまくまとめて「あなたらしい家」に近づけていきます。
万人に合う理想的な家というのは有り得ないと思います。
なぜなら誰もが「その人らしさ」を持っているからです。
訪れた人に「○○さんらしい家ですね」と言われるような家を一緒につくりませんか?
バリアフリーについて
僕が20代の頃、90年代の初めの頃はまだバリアフリーという考え方が現在ほど浸透していませんでした。僕も何も知らずにただ毎日、設計の仕事をこなしていました。
そんなある日、僕は障害を持った人が生活している施設で介助ボランティアをすることになりました。そこで、僕が毎日のように仕事として行っている行為が、車いす利用者にとっては甚だ迷惑な行為だったと知りました。
その施設で生活している女性が施設を出て、念願のアパート暮らしを始めることになり、僕はアパートをバリアフリーにリフォームするための工事を、設計から施工まで見せてもらいました。
街に出て自立生活をするということはまだまだ大変な時代でした。障害を持った人がどれだけの思いで一人暮らしを始めるかというのを間近で見せてもらい、僕も専門分野を活かして何かお手伝いがしたい、と強く思いました。
障害者にこだわる訳
縁があって、そのアパートの工事を見学させてもらった彼女と結婚し、かれこれ20年になりました。
妻には生まれつき障害があります。脳性まひのアテトーゼ型で、不随意運動と言語障害があります(その他にも色々ありますが)。外出には電動車いすを使い、家の中では手動車いすを脚でこいで移動しています。手すりがあればなんとか1分ぐらいは立っていられる程度で、歩くことはできません(結婚当初はフラフラと歩いていたのですが、二次障害で歩くのが難しくなりました)。
車いすで必要な空間の広さ、車いすの動き、介助方法。一緒に生活していることで、知識としてだけではなく、多くのことを身をもって知ることができます。
2001年から8年間、障害者小規模作業所の職員として、作業所の立ち上げから関わることができました。様々な障害の人と出会い、様々な分野の人とつながり、何ものにも代え難い、貴重な財産を得ることができました。
障害を持つ人のリフォームから始まり、車いす利用者の新築住宅、障害者施設の設計など、いろんな建物に関わらせていだたいています。建築設計をする者として、障害のある人の、より良い建物を設計していくことが僕の目標です。