名古屋市や愛知県で新規に福祉施設を開所し、新たに消防設備の設置が必要となった場合、名古屋市の場合は「消防用設備設置届」、愛知県の場合は「防火対象物使用開始届※例:東海市」の写しを提出する必要があります。

建築物を用途変更して福祉施設として使うには建築的手続き消防的手続きの2つが必要になります。消防の手続きに関しては管轄の消防署の予防課が窓口になります。消防署に相談に行く場合“あるだけ”の図面と、どういう福祉サービスを行うか・利用者さんの人数・職員の人数などを書き留めておくと良いと思います。収容人員は必ず聞かれます。人数によっては避難器具など必要な消防設備が大きく変わってきます。

生活介護は消防法の別表でいうと「6項ハ」になります。グループホーム(障害支援区分が4以上の方が8割以上)は「6項ロ」になります。「」の方が基準が厳しく「」の方が基準が緩いです。泊まりがあるのが「ロ」、日中活動は「ハ」と覚えておけば良いかと思います。ただしグループホームでも、障害支援区分が前述以下の場合は「ハ」になり、基準が緩くなります。

生活介護(6項ハ)の場合、必要となる消防設備は、誘導灯消火器自動火災報知設備(延床面積300㎡以上の場合)、避難器具(階段の数や収容人員による)などです。グループホーム(6項ロ)の場合、必要となる消防設備は誘導灯、消火器、自動火災報知設備(面積に関係なく必要6項ハのグループホームでも必要)、消防機関へ通報する火災報知設備面積に関係なく必要)、そしてスプリンクラー設備などです。ちなみに「非常用照明」は建築基準法の範ちゅうであり、消防設備ではありません。

誘導灯や消火器、スプリンクラーはご存知かと思いますが、自動火災報知設備=通称「自火報」や、消防機関へ通報する火災報知設備=通称「火通」とはなんでしょう?「自火報」の役目は建物のどこかで火災が発生した場合、感知器が火災を感知し、その信号を受信機が受け取り非常ベルを鳴らしたりすることで建物内の人に火災の発生を知らせるものです。スーパーなどの天井に付いている円形の器具はたいてい感知器です。受信機はマンションのロビーや福祉施設の事務室の壁に設置してあるので皆さんも見たことがあると思います。そして「火通」は自火報と連動して、火災が発生した場合に最寄りの消防署に自動的に電話回線を使って通報する装置です。

この自火報、工事費も含めると結構な金額になります。ここで金額を示すと金額がひとり歩きしてしまう恐れがあるので、ネットで「自火報 設置費用」などで調べてみてください。もしこれから生活介護を立ち上げようとしている場合、延床面積が300㎡以上かどうかで初期費用が大きく変わってきます。物件によっては既存の自火報が建物に設置してある場合もあります。もし自火報があったら消防署に点検の報告がなされているか書類をチェックしてください。グループホームの場合、自火報は必ず必要になります(6項のロでもハでも)。ただし延床面積が300㎡未満で条件に合えば「特定小規模施設用自動火災報知設備」というものが使用可能になります。これは住宅用火災警報器の各感知器が連動して火災の発生を知らせるようなもので、工事が簡単で受信機もいらないので安価になります(将来500㎡未満に拡大する可能性あり)。

そしてスプリンクラー設備。スプリンクラーによる初期消火の有効性は疑う余地がありません。6項ロのグループホームにはわずかな例外を除き、面積に関わらず必要となります。こちらも工事費を含め結構な金額になります。様々な条件さえクリアすれば「特定施設水道連結型スプリンクラー設備」というタンクを置かない水道に直結するスプリンクラーもありますが、それでも結構な金額になってしまいます。水を使わない「パッケージ型自動消火設備」というスプリンクラーもあります。リフォームの場合、こちらの方が工事手間がかからない分、安くなる場合もあります。

避難器具は2階の収容人員が20人以上の場合や、3階以上で階段が1つしかない建物(※特定一階段に限りません)で収容人員が10人以上だと必要になります。収容人員は基本的にその階にいる可能性のある利用者・職員を含めた最大の人数になります。避難器具にはいろいろな種類がありますが、福祉施設の場合、管轄の消防署と相談の上、どの避難器具が使うかを決めることになると思います。障害の種類によって使える使えないの判断をされることがあります。

消防署への相談は施設の方だけで行っても良いのですが、グループホームは必ず消防設備が必要になるので先に消防設備を専門に扱う、通称「防災屋」さんに相談するのが良いと思います。防災屋(消防設備士)さんに相談し、一緒に消防署へ相談に行くのが一番の近道だと思います。自分は消防設備士甲種4類を取得していますので、自火報の相談に乗ることは可能です。

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